A-LAB Exhibition Vol.41
人間の死生観に興味を抱き、小説や古代史に着想を得て幻想的な作品を生み出してきた気鋭の画家、黒宮菜菜の新作個展を開催します。
黒宮は近年、古墳時代の遺跡から出土した「少年」と「鳥」をモチーフに取り上げ、浮遊する魂のイメージを描いてきました。今回の個展では、そこからさらに展開し、空間を往来する鳥、馬、船、さらに見えない存在を可視化する衣服の袖や領巾(ひれ)の揺れなど、古代から様々な形象に託されてきた、魂のイメージを模索します。絵具や蜜蝋、植物や石など様々なものから成る独創的な画面から、どのような「たましいのかたち」が生成されるのか。注目の最新作をぜひご覧ください。
開館時間=(平日)11:00-19:00、(土日祝)10:00-18:00
休館日=火曜日、年末年始(12月29日〜1月3日)
主催=尼崎市
【出展作家プロフィール】*作品画像は参考画像です。
2015「トーキョーワンダーウォール都庁2014」、東京都庁第一本庁舎3 階南側空中歩廊、東京
2018「うつつ」、ギャラリーノマル、 大阪
2019「Boys」、FINCH ARTS、京都
2019「ARKO2019 黒宮菜菜」、大原美術館 本館、岡山
2020「カタストロフの器」、ギャラリーノマル、 大阪
2020「画廊からの発言 新世代への視点2020 黒宮菜菜展」、コバヤシ画廊、東京
2021「ウツシキ アヲヒトクサ 黒宮菜菜展」、 京都場、 京都
2022「鳥を抱いて船に乗る」、 ギャラリーノマル、 大阪
2016「3 人の絵」、同時代ギャラリー、京都
2018「第21 回 岡本太郎現代芸術賞展」、川崎市岡本太郎美術館、神奈川
2018「京都府新鋭選抜展 2018」、 京都文化博物館、 京都
2019「30th - Miracle vol.5: Miracle」、 ギャラリーノマル、 大阪
2019「ポートレート モード」、2kw gallery、滋賀
2019「ここが浄土か。」、 FINCH ARTS、 京都
2020「VOCA 展2020 現代美術の展望ー新しい平面の作家たちー」、上野の森美術館、東京
2021「HOI-POI: Japanese Contemporary Painters」、 SPACE Four One Three、 ソウル、韓国
2021「Aliens 2」、 FINCH ARTS、 東京
2021「「じねんのいのち」by FINCH ARTS」、CADAN 有楽町、東京
2022「Since 1989 NOMART ーアーティスト × 工房展ー」、銀座 蔦谷書店 GINZA ATRIUM、東京
黒宮 菜菜 | 鳥を抱く#4 | 2023
黒宮 菜菜 | ウツシキ アヲヒトクサ | 展示風景(京都場) | 2021
黒宮 菜菜 | 緑の穴 #1 | 2022
古代の日本人は、魂の色を青色と考えていたらしい。そして、肉体が死を迎えると、魂は鳥や馬や船になる。陸海空、遠くまで移動可能なものたちだ。また、行ったきりではなく、再び帰ってくる性質のものたちでもある。行ったり来たり、どこを?と聞かれたら困るが、この辺りをうろうろとしているものたちなのであろう。
他にも、眼に見ることのできない魂は、衣服の袖や領巾( ひれ) の揺れによって視覚化されてきた。風が魂を運ぶというのだ。人が袖を振るうとき、風を受けて領巾が棚引くとき、布の動きを介して魂が目の前に現れるのだ。
わたしが魂というキーワードに興味を持ち始めたのは、古墳時代の遺跡に渡り鳥(アジサシ) を抱いた少年の遺骨が埋葬されていたというテキストを読んでからだ。両親か親族が幼くして亡くなった子どもの命に想いを馳せ、渡り鳥(毎年舞い戻ってくる) に魂を託して抱かせたのではなかろうかという内容であった。鳥に魂が乗りうつる。このような考えが日本にあったことにとても驚いた。
魂が何かしら具体的な形をとって未来永劫存続するというイメージの生成。有限の命を自明のものとしながら生きる人間にとって、この生成活動は重要な営みに当たるのだろう。分からない、見えない、では安心できないのだ。だから想像によって魂の形を補った。
これは、死を克服しようと試みた歴史ともいえるものではないだろうか。
これまでも人間の性や死生観に興味を抱いて創作活動を続けてきたが、ここでは、古代日本の魂の形象にヒントを得て作品を作ってみたいと思っている。神話や考古学の資料などを横断しながらイメージを紡ぎ、眼に見ることのできない魂の形を模索していきたい。
黒宮 菜菜